『その場しのぎでいかがわしくて』——シャレード新人小説賞感想

「おもしろーい!」としか言えない

  はてなブログをたわむれに開設してみましたものの、放置しっ放しではや三週間……? 自分の原稿が一段落したので、以前から書こう、書こうと思っていた「シャレード新人小説賞」の感想文を書くことにしました。……はあ、やっとだよ……。

 Twitterやブログのコメント欄などで、「……感想書きますね!」という社交辞令は良く見かけるものですが、あれを本当に実行する人とそのまま永遠に感想書かない人の比率を研究してみたら、面白いことになるのではないかと思われます(笑)。俺は実行するぜ!

 というわけで、感想文なのですが……。

 まず「シャレード新人小説賞」というものについて軽くご説明を。

 商業BL小説読みの方々なら皆様よくご存知の、二見書房のシャレード文庫が主催する、BL小説の新人賞です。

 そして他の数多あるBL小説新人賞と一線を画しているところは、なんと読者の投票でデビューが決まる、公開投票形式なのです。ご存知でしたか?

 候補作品は毎回三〜四作品で、毎週一回、火曜日に一回ずつ連載され、十週で完結します。完結後は二週間ほどそのまま掲載された後、「得票数が一定数以上」を充たせば、一位の作品は受賞となり、その作家さんはデビューするのですね。大変燃えるエンターテインメントなシステムなのです!

 で、わたしが部外者なのになんでこんなに熱くなってるかも一応ご説明しますと、私は昨年の今ごろ『白猫ゆうれい』という小説で候補作にあがったのですが、ばっちり敗退しました。それでもなぜかご縁があり、シャレードパール文庫さんという同じ二見書房さんの電子書籍専門のレーベルから『水瓶座はきょう失恋するでしょう』という著作を出させていただきまして、宣伝も兼ねて(笑)応援させていただいております……! 私利私欲の塊で、ほんとうにすみません……!

 

 それでは、ただいまシャレード新人小説賞で掲載中の三作品の中から、月田朋さんの『その場しのぎでいかがわしくて』の感想を以下に書かせていただきますね。き、緊張する……!


まるで邦画を観ているような、心地よい空気感

 自分好みの若手俳優をキャラクターに当てはめ、お気に入りのBGMを流し、オサレげな街に彼らを配置して、ふらふら休日の街を歩きながら缶ビールを飲む。美しい俳優達の会話を妄想しながら……。そんな小説です。

 まるでセンスの良い邦画を観ているような、ご機嫌なBL小説。

攻め視点なので、感情移入し過ぎず、攻めのぐるぐるする恋心をニヤニヤ楽しめる!

 感情移入しすぎてぼろぼろ泣きながら小説を読むのって、「カッコ悪い」じゃないですか。(※誤解のないように申し上げておきますが、私は感情移入してぼろぼろ泣きながら小説を読むのが三度のメシより好きですよ!)
 月田さんの小説は、徹頭徹尾お洒落。
 読者にそんな格好悪い真似はさせません。
 あくまでお洒落に、表参道あたりのカフェでナントカフラペチーノを飲みながら、BL小説を読む……ってあんまり格好良くありませんね(笑)。しかも秋なんだからフラペチーノはいくらなんでも寒過ぎるんじゃないの?! いやはや……紹介したい小説がいくらオサレでも、紹介する側がそのオサレについて行けていないようです。
 でもとにかく、一定の距離を置いて、のめり込み過ぎずに、ほんわりリアルな恋愛を、楽しむのです。
 でもその内容は軽いだけじゃなくて、誰もが恋愛中に経験したことのあるあれやこれやを甘くほろ苦く思い出させてくれて、この秋のセンチメンタルな季節にピッタリのアンニュイな気分に浸ることも出来るし、でもアンニュイにさせ過ぎないユーモアに溢れているのですね。


キャラクターが魅力的

 シャレード編集部のコメントにも書いてある通り、キャラクターを一言で表せるほどキャラ立ちしているのです。
 キャラがはっきりしてると小説の面白さは俄然引き立ちますよね。
攻めの開堂くんはむっつりで、表に情熱をなかなか表現出来ないんだけど、その分、エロいんです(笑)。
 受けの七尾さんも明るくてビッチな表向きなんですが、それだけに内面は繊細なんです。
 そういうのをぜんぶ小説の中で語り過ぎてしまうと「野暮」なんですが、そこは月田節。「語り過ぎないセクシーさ」があると編集部で評されたように、絶妙なさじ加減で読者に想像させてくれます。


さいごに……

 とにかくこれはオススメ出来るHappyで楽しくて、でもどこか胸に迫るものがある、センスの良い邦画のようなBL小説なので、ぜひぜひ読んで欲しい!
 そしてだいじなことですが、投票してあげて下さい。
 めんどうくさい会員登録などは必要ありません。シャレード新人小説賞のトップページの「投票する」ボタンをポチッと押すだけです。
 この方の小説にイラストがついたら、もっともっとステキだと思いませんか?
そして個人的な妄想ですが、実写映画化して欲しい(笑)。

 オススメ、です!


他の二作品は?

 他の二作品の感想は、上記の『その場しのぎでいかがわしくて』の作者でいらっしゃる月田朋さんのブログにとっても細かく書いてありまして、わたしも「うんうん、そうだよね……!!!!!」と激しく同意しながら拝読しましたので、リンクを貼っておきますね。

 ぜひぜひ、三作品ご賞味いただきまして、投票しつつ、三作品の行方を楽しんでいただければと思います。

 

 今回は映画評論家の淀川長治さんになったつもりで書いてみました。

 

 ではでは、秋の夜長の読書、お楽しみください!

 

甘粕杏奈